条文上は5年に延長ですが、「当分の間」3年とされています。3年に延長されたのは賃金請求に関する債権です。
解説
時効に関する労基法115条の改正により、現在のところ1時効期間としては2年・3年・5年のものが併存する形になっています。「3年」に延長されたのは「賃金の請求権」に関するものであり、有給休暇等、その他請求権は含みません。以下では、時効期間ごとに債権の種類を整理したいと思います。
1 時効期間が2年のもの
<災害補償請求権>
療養補償(75条)、休業補償(76条)、障害補償(77条)、遺族補償(79条)、葬祭料(80条)、分割補償(82条)
<その他請求権>
帰郷旅費(15条3項、64条)、退職時の証明(22条)、金品の返還(23条。賃金を除く。)、年次有給休暇請求権(39条)
2 時効期間が3年のもの
<賃金請求権(退職手当を除く)>
金品の返還(23条。賃金の請求に限る。)、賃金の支払(24条)、非常時払(25条)、休業手当(26条)、出来高払制の保障給(27条)、時間外・休日労働等に対する割増賃金(37条)、年次有給休暇中の賃金(39条9項)、未成年者の賃金請求権(59条)
<付加金>
付加金も時効期間は3年2となります。但し、付加金の対象となる「違反」や賃金未払いは令和2年4月1日以降のものであればという前提です。
<法廷書類や賃金計算に関する書類の保存期間>
労働者名簿、賃金台帳等の法定書類また、タイムカードなど賃金計算に関する記録保存義務も3年3となります。
3 時効期間が5年のもの
<退職金>
ただし、労働協約又は就業規則によって予め支給条件が明確にされている場合に限ります。
(倉重)